昭和13年4月1日、近代建築の粋を集めた福屋新館が誕生しました。西日本随一の規模と広島一の高さを誇る新館は、地上8階・地下2階建ての、白亜の殿堂と呼ぶにふさわしい建物。全市を一望できる屋上からの大パノラマに人びとは目をみはり、新時代の幕開けを告げる本格的な百貨店となった福屋を歓迎しました。新館のオープン当日、小雨まじりの天気にもかかわらず、あふれた群衆は車道にまで人垣をつくり、食料品売場は、地下の売場という珍しさも手伝って大混雑。100坪の観客席を備えた7階大余興場では、広島検番芸妓連による舞踊大会が花を添え、遊具施設が整った8階子供遊園地は、多くの子供連れで大にぎわい。近代的な設備で豊富な商品をそろえた各売場は、予想を上回る大盛況となりました。しかし、奇しくもこの日は「国家総動員法」が公布された日でもあり、時代は、戦争の長期化、泥沼化へと動き始めていました。